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かたん、ことん、かたん、ことん…

椅子に座って心地よい振動を受ける。
車だと気が抜けないから、やはり電車は楽ちんだ。乗り過ごしてもそれはそれで楽しめる。

今日の目的地は終点。乗車駅から中心部まで満員電車に揺られ、乗り換える。
ぎゅうぎゅう詰め電車から、人の波に体を預けて人気の無いホームへ向かった。電車は30分に一本。私以外にはくたびれたサラリーマンと大きな旅行かばんを持った女性、それから自販機が二つあった。
「あったか~い」と書かれたお茶のボタンを押すと、なぜか生ぬるいココアが出てきた。

10分程待って、アナウンスが流れた。
「まもなく…、黄色い点字ブロックまでおさがり下さい…」
すぐに赤色の電車が現れた。中は空いている。私は適当に席に座った。
ここから数時間乗りっぱなしなので、目的地で待つ友人に連絡を入れた。

《今乗った。
 着く前に連絡するね》

友人からは連絡は帰って来なかった。

友人は自分の少女時代を共に過ごした仲だ。
私の全てを知っている。恥ずかしいことも、苦しいことも、嬉しいことも-
ブラックジョークがジョークじゃなくなる前に気づいてあげれたなら。
年に比例するように病院にいる日が長くなっていった。無理して旦那さんとこどもとそれから私に手紙を書いていたね。手紙なら一生残るなんて、貴女らしい。
一緒に上京して、おやじさんが倒れたって何十年か前に故郷に戻って。そして今。
終点の駅の近くの墓におやじさんとおふくろさんと貴女が眠っている。むすめさんとお孫さんに貴女のブローチを返そうとしたら、泣きながら、笑いながら、穏やかな顔で断られたよ。
どうかな。今日はつけてみた。随分似合うようになったでしょう?

だから、どうかまだ待っていてね。
もうすぐそこに行くから。

2/28/2023, 11:14:30 AM