「大好き」
もう、潮時かな。
喧嘩も増えて、気持ちも冷めている。思い切って、彼に別れを告げた。
「…うん。わかった。それじゃ、元気でな。」
彼の答えは驚くほど呆気なかった。私にそう告げると足早に立ち去っていった。
私は呆気にとられ、何も言えずにその場に立ち竦んでしまった。
失ってから気づくとはよく言ったものだ。私への愛情が無くなった途端、無性に寂しくなる。
わがままな自分に嫌気がさす。
気分転換に外の空気を吸うため玄関から出ようとすると、扉の向こうに人の気配を感じ、耳を済ませる。
「ぅ、ううぅ…ぐすっ、ごめん。ごめんな。ぐすっ、本当はずっと一緒に居たい。大好きなんだよ…うぅ。」
彼だ。彼が泣いてる。
今更、そんな事言わないでよ。私が欲しい時には全然言ってくれなかったくせに。
「私も、大好きだったよ…。」
3/18/2025, 11:12:05 AM