街の雑踏に紛れて、あなたを見失った。
あなただけは特別だったのに。
他の誰かと混ざり合うことなんてないと思ってたのに。
そして、私との繋がりは決して断ち切れないものだったはずなのに。
野良犬のように、あなたの香りを求めて彷徨う。
この街の何処かで、きっとあなたも私を探している。
街行く人の好奇の目に晒されながら、あなたを探して叫び続ける。
あなたと家に帰りたい。
「ツン!」
あなたが私の名前を呼んだ。
人混みをかき分けて、あなたが走ってくる。
ああ、あの重そうな体。見慣れた浴衣姿。
私を探して走り回ったのだろう、汗だくの体から、私にだけ分かるあなたの香りが漂ってくる。
それはあなたの香水。私にとっての。
あなたと再会し、私達はまた繋がれる。
二度と断ち切れることのない、硬い石の縄で。
上野と薩摩を結ぶ、この一本のリードで。
8/30/2024, 12:29:56 PM