不整脈

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この季節の空は、遠くて近い。
雲が流れていくのが目で追えるくらい、
はっきりしていて。
それなのに、どこにも触れられない。

あなたを見つけた日、
あの空にも少しだけ恋をした。

不安定な光が、
あなたのまつ毛に影を落としていて、
風が服の袖を揺らしたとき、
私はなんでもない顔で、
ちゃんと覚えていた。

あなたはきっと知らない。
空を見て笑っていたことも、
同じ空を見上げると胸がちくっとすることも。

恋だなんて、そんな言葉は使いたくなかった。
だって空は広すぎて、
私の想いは小さすぎたから。

いつか届く?
そんなはずない。
風がさらっていくのは、
涙より先に、私の声。

だからせめて、空に恋をしたことにしておく。
それならきっと、誰にもバレない。
あなたが知らなくても、
雲は全部、
わたしの気持ちを運んでくれる気がするから。

明日、晴れるといいね。
あなたが見上げる空に、
私の気持ちが少しでも混ざってたら──

それだけで、ちょっとは報われる気がするの。

7/6/2025, 11:32:07 AM