白糸馨月

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お題『エイプリルフール』

「ねぇ、ネタ思いついた?」

 同期からLINE電話がきて、私は「考え中」と返した。私達は企業Vtuberで基本的な連絡手段はDiscordだが、同じタイミングでデビューした仲間は個人的にLINEでつながってる。もちろん、本名も知ってる。

「え、すごーい。私はパスかな?」
「なんで?」
「だって、スベったらハズいし」

 まぁ、そうだよなと思う。別にエイプリルフールなんて、やりたい人がやってるだけだし、やってない先輩ライバーもちらほら見かける。

「そっか。じゃ、一緒にかんがえない?」
「マジで? 私、ネタ枠じゃないけどいいの?」
「うん」

 言いながら私はいつも配信のネタを集めている小さなリングノートを取り出す。

「じゃあさ、こういうのどう? ほら、性別変えたり、動物になったり」
「却下。先輩がやってる」
「えー……じゃあ……去年の●●さんみたいなの、私好きだけど」
「うーん、いいと思うけどシリアスなのは私のキャラじゃないし」
「そっかぁ」

 同期が考え込んでしまっている。彼女は歌唱力がズバ抜けていて、エイプリルフールに歌ってみたを出すことは知っているが、ネタ的なことに関してはすこぶる弱い。
 そんな時、私はふと思いついた。

「私さぁ、バ美肉やってみようと思う」
「え? マジで言ってる!?」
「マジ」
「大丈夫。今も十分ネタ枠だけど、今後そのイメージついちゃうんだよ」
「いい。私は他の人がやってないことをやるの。んじゃ、準備してくるわー」
「うん、わかったー。頑張って」

 そう言って電話を切る。私はよし、と気合を入れるといつものメモ帳にバ美肉の中身となるおっさんのイメージ図を描き始めた。ただキモいだけじゃ、傷つく人がいるだろう。キモさの中に愛らしさを感じさせるおっさんを生み出すんだ。

4/1/2024, 11:48:29 PM