300字小説
もう一度君とワルツを
「私と踊りませんか?」
それが召喚後の最初の言葉だったねぇ。はじめはカモだと思ったんだよ。若い娘だし。適当に相手して、願いを叶えて、とっとと魂を頂けばいいと。
だか、甘かったねぇ。悪魔を呼び出し力を借りてまでトップスターになろうという野心家さ。そのギラギラとした瞳にあてられて……ミイラ取りがミイラになっちゃったね。寿命で死ぬまで付き合うことになってしまったよ。
えっ? 何で、ようやく手に入れた魂を自分に預けるのかって? そりゃまあ……踊り足りないからねぇ。地獄につれていったら、もう一度会うことが出来ないでしょ?
ワルツを口ずさみながら悪魔がステップを踏んで去っていく。その後ろ姿に天使は小さく肩をすくめた。
お題「踊りませんか?」
10/4/2023, 10:49:14 AM