ゼラニウム

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『初恋の日』
 後継者順位が低く、実質幽閉扱いとなっていた私に人として接してくれた男の子がいた。

その子は頼まれたら断れないくせに、極度のビビリで、薄暗い館にてよくべそかいていた。

それによく話しかけてきて、うざかった。
執事見習いのはずなのに、執事らしくない振る舞いをずっとしていた。

監視目的なのか、使えないから押し付けられたのか、よくわからないが、こっそり抜け出したときも、必ず着いてきた。
薄暗いところを通るときはよく怖がって立ち止まっていた。置いていくにしても、呼び戻されたら面倒なので、あきらめて執事らしくない男の子にてを毎回差し出した。

しばらくして、腐った王家を再建するという名目の革命計画の密告が寄せられた。
人々は私に都合のいい道具として関心が向けられるようになった。
男の子は泣かなくなった。
執事らしく、急に他人のように突き放されて、余所余所しさをかんじられた

わたしはどこか寂しさを覚えた。ずっと一人だと思っていたが、実際は一人ではなかったということに今さら知った。
無意識に恋心に似た何かを抱いた。

男の子の演技は見事なことであった。王、貴族をだまし、着々と亡命の準備を続けていたのであった。


男の子が差し出す手を女の子は受け取った。
それ以降の記録は残されていない

5/7/2024, 2:53:17 PM