エムジリ

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「きゅうけつき」
「ん~、きつつき」
「き…きせき」
「はあ!?また『き』かよ!」
「あっはっは、ガンバー」

夕暮れ時、学校の帰り道。
会話のくだらなさとは裏腹に、私の心は有頂天。
あなたとおしゃべりしながら帰れるなんて、とっても幸せ。
難しい顔して悩む彼を、つい、にこやかに見つめてしまう。

「どうする?降参?」
「……すっごいヤツ、思いついた」
「何?」

どんな仕返しの言葉が来るかと思ったら、
急にあなたが立ち止まるから、
私は一歩進んだところで振り向いて聞くことになった。

「きみが、だいすき」

季節は秋の始まり。
私達の間に吹き抜ける風は涼しい。
でも、彼の額に浮かんだ汗が、
これはただの言葉遊びじゃないと言っている。

沈みかけの太陽が今度は私の胸に昇ったみたいに、熱い。
あなたと交わる視線が、キラキラ、きらめいている。


▼『き』らめ『き』

9/4/2022, 12:51:17 PM