「未来への船」
少し先の未来を覗けに行けると噂の船。
遠くからでも分かるほど妖しげな雰囲気に、僕は立ち止まる。
こっちに戻って来れなくなったらどうしよう。
もしも、あの子に、
会えなくなったらどうしよう。
でもあの船に乗ってしまえば、今がんばって心にしまっている怖さや、苦しさや、寂しさを、
無くせるだろうか。
僕は、泣きながら、ただ僕の楽さを求めて、
ゆっくりと波止場に向かった。
その船は、未来を見れるかわりに過去の記憶が消えてしまう代償を抱えた乗り物だった。
5/11/2025, 1:17:07 PM