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ぱっと伸ばされた手は、漂っていた花弁を取っていた。
「藍色だ、珍しいね」
「違うよ、ここら辺じゃそれが普通の色」
「そっかぁ」
くるり陽に透かして遊ぶ指先、その繊細によく似合う。
空気に満ちる透き通るような甘い香り。
ふわふわと栗色の髪をかき混ぜた風は、僅か刺激の有る個性の強い甘さを引いた。
周囲の視線が何処に有るか、よくよく理解しきって口を開く。
「気に入ったなら、ソレに替える?」
「好きだね、その質問」
蒼の花、翠の花、黄の花、橙の花、辿った軌跡全て。
そして膨らんだ頬までがお決まりの。
「君がくれたからコレが良いの」
爛々と咲き誇る、紅の花弁を飾って。
どの花よりも華やかに、美しい光が笑っていた。

<遠くの街へ>

2/28/2024, 10:27:58 AM