せつか

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涙の理由など、数え上げればキリがなかった。
視界に入ることの出来ない孤独
浴びせられる言われなき中傷
周囲と比べて抱く孤立と劣等感
泣くなという方が無理な環境で、それでも彼女は最後まで、私以外の誰にも涙を見せることは無かった。

◆◆◆

「どうしましたか?」
「·····あぁ、ごめん。太陽が、眩しくて·····」
強い光は周囲を白く輝かせ、決然として立つ彼の姿を黒く濃く際立たせる。微笑むことも泣くこともないその姿に、私は不意に溢れてきた涙を抑えることが出来なかった。

◆◆◆

「どうした?」
「いや·····電気が全部消えるとこんなに暗いのかと、思って·····」
音も無く、光も無い世界は自分の姿すら曖昧で、闇に溶けてしまったかのような錯覚に陥る。暗黒の中でシニカルに笑うその姿は、私に泣くことすら出来ない孤独を伝える。

◆◆◆

泣けない者達ばかりの世界で私はただ一人きりで涙を流す。
みんな孤独で、みんな寂しくて、みんな意地っ張りだった。


END


「涙の理由」

10/10/2024, 3:13:34 PM