「秘密の標本」
本棚の奥から木箱を取り出し、カタリと開けた。
木箱の中には鮮やかな紅の葉や、淡い桃色の花びらがその色を保ちながら所狭しと入っている。
私は昔から綺麗な花や葉っぱを拾っては押し花や押し葉にして収集し、疲れた時に見ては癒されていた。
そんな木箱の一番上にある、四つ葉のクローバー。これだけは他のどの花よりもどの葉よりも鮮やかに輝いて見える。
あの日、あなたが私にくれたクローバー。
もうあなたはいないのに、柔らかな緑色は今もあの時のままで。
抱きしめるようにギュッと胸にあて、そっと木箱にしまった。
11/2/2025, 4:29:47 PM