「夏」
陽炎が揺らめく日は異界が似合う。影が短くなる正午、人通りが少ない道をひとり歩くとまるで人ならざる者の世界に足を踏み入れたように感じてわくわくする。
蚊取り線香の煙の匂いが漂うと夏にまつわる怪談が読みたくなる。扇風機の風に当たりながらほんの少し不思議な話を読むと臨場感があって面白い。
猛暑は苦手だ。空調の効いた部屋を一歩外へ出るとねばつくような不快な暑さが全身をつつむ。立っているだけで体力と気力が削れる気温は本当に厄介だと思う。
麦茶と塩飴が私の夏のおともだ。梅味の塩飴を口に含みつつ、夏バテと熱中症を予防する夕飯の献立を考えるのも結構楽しい。ただ、火を使う料理は億劫になるので、冷やしうどんやそうめん、冷やし中華は考えものだ。
(終)
6/28/2024, 12:29:25 PM