「はー。眠いんじゃあー」
棗色の髪がひらひらと舞う。
放課後。今日も部室へ一番乗りだった俺達は、電気をつけて、いつもの席へと座っていた。
「お前毎日それいってるよな…」
俺は、ポケットから出したスマホへ視線を向けながら答える。
俺達の、第二の家みたいな感じになっているこの部室。入り口付近の棚にこれでもかとゲームやらが詰め込まれているのは、他では考えられない光景だろう。これは、今目の前で眠たそうにしている幼馴染の世良(せら)、こいつの私物だ。
「じゃあ、来るまで自由ってことでー」
こいつが、部を立ち上げるー、なんていった時俺は仰天ものだったが、その後の一言で、全てを察したのだった。
「ゲーム部!ゲーム部を作ろう!みんなで!」
あの理事長だ。娘の創部申請はすぐにOKされた。自由にしていても、何も文句を言われない。まさにフィクション。
だが、あの世良だ。この様な待遇であっても、みんなは責めなかった。その後、暫く世良の寝息をバックに、静寂なひとときが訪れた。数十分して。
「おう!やってるか?」
山路(やまじ)が、ドアを開けて入ってきた。そして、
「こんにちはー」
優奈(ゆうな)も一緒だった。こいつらは、このゲーム部の部員達だ。
「やまっちー。遅いよー」
「いやー。今日はデートが長引いちまってさ。すまんね」
相変わらずのイケメン山路。これで成績もトップなんだから、世の中理不尽だ。
「じゃあ、今日もヌメヌメトーンしろー!」
世良がぶらぶらと揺れる。
「よしきたっ!オーケーよ。じゃあちょっと準備するわ」
おい、今歯が光ったぞ。歯が。爽やかすぎる。
その後。
山路と世良はゲームのセッティングをし、幾つかの動作を確認しあっている。その時、ふと視線を感じ、振り向いた。
「誠さん」
優奈だった。相変わらず、綺麗な桃色の髪だ。
「ああ、優奈。今日もありがとうな」
「いえいえ、お気になさらずに」
俺の隣へ、ゆっくりと座る。
視線の先は、世良と山路の二人。優奈も、多分そうだろう。
「…世良さんの体調は、どうですか?」
数トーン落ちた声だった。
壁に隔たれた様な、そんな気持ちになりながら。
「…あぁ、もう長くない。昨日は、一日寝ていたしな」
「そう…なんですね…」
「先日にやった治療も、ダメだったんだ」
「…世良ちゃん…」
窓から見える、夕凪の景色。
俺は、いつまで世良と、この日常を見られるのだろう。
お題:別れ
5/19/2026, 2:32:38 PM