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「君は昔から泣き虫だ」

そんな言葉を口にしたのは、生まれた時からの幼馴染の渋谷叶夢。
僕と彼女は同い年で、保育園、幼稚園、小学校とずっと一緒だった。

あいつの言うように、僕は昔から泣き虫だった。
泣いては叶夢に慰められてを繰り返してた記憶がある。


そんな僕は今、泣いている。


でも、いつもとは違う涙だった。
それは叶夢も気付いていて、いつもは慰めるのに、今日は慰めることはしなかった。
僕が今泣いているのは、叶夢が東京の高校に行くから。
同じ高校に入学しようと話していた叶夢が、なぜ東京の高校に行くのか、それは父親の転勤だった。
家族で東京に引っ越すことになり、僕の幼馴染は遠くに行ってしまう。
それを聞いて泣いているところだ。

「僕も東京に行く」

「バカ?」

「本気。叶夢が居ない人生なんて、僕は要らない」

「君は昔から泣き虫だ。私が引っ越す日は必ず駅まで送ってね。

その時は、泣かないで」



引っ越し当日



約束通り、叶夢を駅まで送る。
僕は泣きたかった。

でも、叶夢と泣かないと約束したから、笑顔で送った。



送ったあとの僕は、どうなったのか自分じゃ分からなかった。母親に



「あんた、泣いてるよ?」


なんて言葉を言われるまでは






数年後


僕は、あれから変わらず泣き虫に育ってしまった。


「はい、すみません
ごめんなさい、やり直します
僕はこの会社で使えないんですか…?
分かりました、辞めさせてください

仕事も…なくて……家族も減った…
叶夢……いつ会える?…
待ってるからな……
泣いてても許してくれよ……」




「君は昔から泣き虫だ」








目の前に居たのは、あの時より少し成長した笑顔の、



あいつだった。



11/30/2024, 3:48:49 PM