「ぅっくぁ〜」
カタン、と音を立てて、走らせていたペンを置いた。これにて宿題はひと段落。達成感と疲労感に大きく伸びをする。おおよそ体からなるとは思えない音が鳴り、かなり筋肉が凝っていたのだと気がついた。冷房の音が聞こえる。昔、唸っているようだと言ったら友達に大笑いされた。自分にとってはどこがおかしいのかわからない。まぁ、彼女はどこかツボも沸点もおかしい友達だったのだ、と自己完結している。
外は真っ青な、目に痛いくらいの青空だ。いや、真っ青な青空って何だかおかしいかもしれない。仕方がない、現国のテストで赤点ををとるくらいの語彙力なのだ。網戸から風が入り込んでくる。昨日は雨が降ったせいか、少しだけ涼しい風に目を細めた。
網戸の前は私の定位置だ。風が入ってきて心地がいい。この網戸は歪んでいて、左右にスライドすることができない作りになっている。これは、小学生の頃に家の中で鬼ごっこをしていた友達が壊したからだ。
こんな暑い夏の日。目の前の小さな背中について行って、家の階段を駆け降りる。それは止める間もなくずんずん進んで行き、気づいた時には既に外へ飛び出していた。
ギラギラと暑くてうざったい青空の下、それは子供特有のキラキラとした輝きを纏っていて、やたらと眩しかったのを覚えている。やっていることは器物損壊でも、何だか爽やかで絵になっていて不思議だった。
あの、無知でも進もうとする子供の、謎の眩しさは何なのだろうか。
その後その子はこけて、座り込んでしきりに瞬きを繰り返していた。それもまたなんだかおかしかった。窓を締め切っていなかったのが不幸中の幸いと言うべきか。おまけに、網戸は歪んだだけで破けもしておらず、本人も怪我はなかった。あの子は悪運が強かったのかもしれない。
日常生活では動いてくれないこの網戸。掃除の時は不便でイライラするし、たまに母や父が外す。
それでも、この網戸が嫌いじゃないし、変えてほしいとも思わないのは、見るたびにあの眩しさを思い出すからかもしれない。
「まだ見ぬ世界へ!」
6/28/2025, 6:14:09 AM