理美

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君の声がする

携帯電話の音が鳴った。
出ると、途切れ途切れに声は聴こえるが
ノイズ音だらけで内容が聞き取れない。

結局会話が出来ず、一度切って
彼女の携帯電話に、改めてこちらからかけ直した。

出てきたのは彼女のご主人だった。
「今、そちらから電話がかかってきたのですが何か御用でしたか?」
と私が言うと、ご主人は驚いたように
「い、いいえ、かけてないですけど…」
と。そして少しの沈黙が続いた。

「そうでしたか。では何か誤作動かなにかですかね。」というような会話をして電話を切った。

ここまで読んで、あなたは違和感を覚えたかもしれない。
実を言うと、彼女は数年前に亡くなっているのだ。
亡くなる少し前、何十年ぶりかに話す機会があり、私の音楽活動の話をしたら、「今度、絶対聴きに行くね!」とすごく嬉しそうに言ってくれたのだった。

その約束は叶わなかったが、今回スランプ気味の私の為に、天国から応援メッセージをくれたのだろう。
私はこの出来事を、不思議と怖いとは思わなかった。
むしろ、ありがとう!がんばるよ!って思えた。

2/15/2025, 11:45:58 AM