一ノ瀬 奏

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#10 君と一緒に

クリスマスは、君と過ごしたい。
そう言おうとして、言葉を飲み込む。
俺たちは別に、恋人じゃない。
ただの幼馴染で、ただの、友達。
だから、わざわざ言う必要なんてないんだ。
どうせきっと、成り行きで一緒に過ごすことになる。
相手がいないと寂しいし、バイト休む口実になるから。
そんな理由で当日呼び出されるだろう。
なんとなくイルミネーションを見て、
「電気代、めちゃくちゃ高そうだね。」
なんて、ロマンチックから程遠い冗談で笑い合う。
寒さに耐えきれなくなって、コンビニへ行って、二人で酒を買って、そのまま俺の家へ。
それで、ピザを片手に、ホームアローンを見て仲良く寝落ち。
お決まりだ。
そろそろ、連絡してくるだろ。
あいつ、どうせ相手いないし。
冷めたように心で繰り返しながら、通知が来るたびにソワソワする。
スマホが小刻みに震える。
電話だ。
手に取って表示を見ると、あいつの名前が浮かんだ。
電話なんて珍しいな。
早まる心臓を誤魔化すように応答にスライドした。

「今年、クリスマス予定できた」

言葉に、詰まった。
変な沈黙ができて、急いで言葉を絞り出す。
「なんでわざわざ」
動揺を悟られないように、できるだけ冷静に言った。
「なにー?焦ってる?バイトだよ!バイト!」
茶化すみたいに明るい声が返ってきて安心する。
「彼氏でもできたかと思ったわ」
いつもの調子で返した。
「できてないわ!馬鹿にしてるでしょ!」
そんなツッコミを無視して電話を切った。

クリスマス、当日。
結局、あいつから連絡はない。
当たり前だ、バイトなんだから。
連絡しようか迷って、LINEを開いては閉じた。
部屋に俺一人しかいないから、やけに心臓がうるさく感じる。

いや、違う。
連絡したいんだ。
会いたいんだ。
ちゃんと言いたいんだ。

本音を自覚した途端、スマホの画面が妙に眩しく感じてポケットにしまい込んだ。
そして、クローゼットにかけてあった、トレンチコートに手を伸ばす。
そのまま家を飛び出した。

息切らして向かったのは、あいつのバイト先。
目の前まで来て、
「俺、何してんだろ、終わる時間もわかんないのに。」
と、自分に呆れる。
その瞬間、雪が降り始めた。
「あ、雪。」
思わず、空を見上げて立ち尽くした。

1/6/2026, 10:05:12 PM