rororu

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『「ごめんね」』(創作)

 「ごめんね。」
彼女は両手を合わせて可愛い上目遣いで軽く謝った。
「…う…ん、いいよ。全然気にしないよ。」と、私は嘘をついた。本当は腸(はらわた)が煮えくり返っているが、私は自分の感情を他人にぶつけるのが苦手なため、平静を貫いた。平静を貫けた。

 彼女とは腐れ縁で、幼稚園から就職までずっと一緒だった。とはいえ、友達でも仲良しでもない。明るくて容姿の良さから人気者だった彼女は、ワガママで軽薄な面があり、寧ろ、私が1番苦手とするタイプの人間であり、軽蔑すらしていた。なので、ずっと関わりたくなかったのに彼女は私を「幼馴染」として扱い続け、私自身もそれを否定する力を持ち合わせずに取り巻きの一人で居続けたのだ。

 「ごめんね。」
彼女の言葉が脳内再生される。
仕事を押し付けるのはいつもの事だった。
フッと、悪魔の心が囁く。
「代わりの仕事なんて、やらなきゃいいよ」
心のままに、私は帰宅した。
彼女のパソコンに「ごめんね」と、付箋を付けて。

5/30/2024, 5:58:36 AM