どこからか飛ばされてきた赤いリボンの麦わら帽子が、穏やかな海に浮いている。持ち主は、今頃悲しんでいるだろうか。それとも、気がついていないだろうか。誰かの夏の思い出が詰まったそれは、浅瀬に辿り着いた。すっかり緩んでしまった赤いリボンをカモメがつかみ、夏の青空をより鮮やかにして遠くへ消えた。やがて浅瀬を赤いワンピースの少女が訪れた。彼女の泣き声が、波の音にのまれて消えていった。
8/12/2023, 1:53:06 AM