【降り止まない雨】
海星「おはようさん。」
平日の午前6時、僕は起床していた。
妹紅「おはよう。兄さん。今日はずいぶんと早いじゃん。」
海星「そりゃあ、今日は妹紅と出会った記念日だもの。」
6月の中旬。梅雨の時期。僕は彼女と出会った。
「
雨が降っている。台風並みの量だ。その中で僕は傘をさして1人道を歩いていた。たまにはこういう散歩をする。誰もいない道に1人。湿った空気。打ち付ける雨の音。この空間が癖になる。今は何時だろう。そう思ったので腕時計を確認する。
海星「4時かぁ。」
家を出たのは3時。ずいぶんと歩いたものだ。家があって、保育園があって、交番があって、歩くたび景色が変わる。見たことがあっても以前と少し違う。それを発見するのが楽しい。
僕はとある公園の横を歩いていた。公園の土は泥に変化していた。そして、誰かがベンチに座っている。座っている!?それを理解するのに少し時間がかかった。僕はその方へ近づいた。
海星「どうした?こんな雨の中。風引くぞ?」何かあったのだろうか。その問いを彼女に渡した。
妹紅「誰だか知らねぇが、あんたには関係ねぇよ。」
ずいぶんと男勝りなもんだ。まぁ、そういうのも嫌いではない。
海星「親が心配するぞ?」
妹紅「親なんてとっくの昔に死んださ。」
彼女の瞳は遠くを見ていた。
海星「言いづらいこと言わせてごめんね。」
妹紅「別に気にしてねぇよ。」
海星「家に来るかい?」
妹紅「は?」
海星「君の過去に何があったかは知らないけど、ここにずっと居座るのなら僕は君を連れて帰ろうと思う。」
妹紅「何されるか分かんねぇから無…。」
海星「じゃぁ、指切りしよう。僕は平日の朝7時から出勤してるから、君が僕の家に住まうのが嫌なら勝手に逃げるといい。だけど今だけは、君をこのまま放っておけないんだ。」
妹紅「…。わかった。あんたに付いて行くよ。」
そうして彼女は僕についてくることになった。
彼女は今僕の隣を歩いている。
海星「君はなんであそこにいたの?」
妹紅「もともと住んでた家庭で暴力を受けて逃げ出したんだ。だけど、どこに行けばいいか分からなくて…。」
海星「そうか。大変だったな。帰る前にコンビニ寄るか。」
僕は近くにあるコンビニに足を向けた。
妹紅「自炊はしないのか?」
海星「たまにするくらい。僕はコンビニに売ってあるおにぎりと唐揚げが好きなんだよ。想像するだけでお腹がなるのさ。ほら、君も選びな。遠慮はせんでいいよ。」
そう言って僕は唐揚げを選んだ。その後、彼女と合流した。
海星「これ。お願いします。」
妹紅「お財布の中身大丈夫か?」
海星「安心しろ。唐揚げのために一万円は持って来ている。」
妹紅「1個200円ぐらいなのにか?」
海星「あぁ。もちろん。何か他に買い物をするとき、残さないと。」
妹紅「なにそれキモすぎだろ。」
このような会話をしているうちに、会計は終わった。
海星「さて、帰りましょうか」
そう言ってコンビニを出た。
家に付いた。結構早かった。
海星「君は風呂に入りな。寒かっただろう。ゆっくり温もれ。」
妹紅「どうしてそこまでする。」
海星「なんか、見捨てられないなって思って。」
妹紅「ほんとにそれだけか?」
海星「うん。それだけだよ。早く入っておいで。」
誰かに助けられるという経験がないのだろう。そのせいで、僕の取っている行動に裏があるのではないかと疑ってしまう。無理もない。
もうそろそろ上がってくる時間だが、まだかなぁ。僕は机に食べ物を並べて待っていた。
妹紅「上がったが、その、ほんとにありがとう。」
海星「ほら、はよ食べよ?お腹が空いたよ。今日はある意味御馳走だ。いただきます。」
妹紅「いただきます。」
そうして、僕は晩飯に箸が向いた。一通り自己紹介をし、途切れない会話をした。
午後9時。夕食も終わっていつもだったらダラダラしている時刻。だが今回は違う。
妹紅「寝床どうしようか。」
海星「妹紅が僕のベッドで寝ると良い。僕はどこでも寝れる体質だからね。それに、妹紅のほうがつかれてるんじゃないか?いいよ。使いな。」
妹紅「わかった。」
彼女はベッドの方へ向かった。僕はちょっと仕事が残っていたからそれをやろう。そう思ってパソコンを開いた。
起床。鳥のさえずりは聞こえなかった。やはり今日も雨がひどい。だからといって仕事を休むわけにはいかない。今日は月曜。1日たいてい8時間の業務を行う。ああ、だるい。めんどい。行きたくね。そんな気持ちになる日だ。とりあえず朝食を作ろう。そう思って。冷蔵庫からのいろんな物をとりたすのだった。
妹紅「おはよう。」
海星「おはよう。そういえば、妹紅って何歳だっけ?」
妹紅「13。」
海星「おう。いけそうじゃん。」
妹紅「何が?」
海星「妹紅は学校に行きたいかい?」
妹紅「まぁ、興味はある。」
海星「じゃあ、早くて来週。学校に登校させるよ。転校設定で。」
妹紅「どうやったらそんなことが。」
海星「僕の仕事でどうにかできるから。そんな心配せんでええよ。」
妹紅「わかった。」
さて、食事も終わった。行くとするか。
海星「行ってきます。ごゆっくり」
妹紅「いってらっしゃい。」
ずいぶんと沈んだ声だが、まぁ、大丈夫だろう。僕の感が入っているのだ。安心して行こう。
1週間後。
海星「大丈夫か?初登校だか、緊張してないか?」
妹紅「そんなに心配しなくても大丈夫だって。じゃ、行ってきます。」
海星「頑張ってな。」
そうして僕は送られる側から送る側へと変わった。
また、1週間。また1週間と月日は流れていった。彼女は学校でも楽しくやってて良かったと思う。僕も学生時代こんなだったよな。うんうん。こういうのが一番。僕はこれからもこのような生活であってほしいと強く願った。
」
こんなことがあったなぁ。僕はこの思い出を振り返っていた。
妹紅「何やってるの。早く手伝ってよ。」
妹紅ももう高校生。今もなお、楽しく学校生活を送ってるみたいだ。それに、だいぶモテてるみたいだし。親役として、とても嬉しいよ。
海星「今行くからちょいまち。」
僕はケーキの準備をするのだった。
5/26/2024, 7:12:55 AM