__あなただけが、私の気分を上げてくれる。
初任給がもらえたら買おうと思っていた流行りのワンピースが売り切れていたとき。
湯船の栓を閉め忘れてお湯を無駄にしてしまったとき。
仕事で取引先の相手にお茶をぶっかけてしまったとき。
先週のデートで彼氏に褒めてもらえたお気に入りのピアスをなくしてしまったとき。
「はあ……私ってなんでこんなにダメダメなの?なにをやっても上手くいかないよ……」
自分の不器用さに思わず愚痴をこぼした、その時___足の指をふわっとなぞられる。
「ニャー」
「……慰めてくれてるの?」
「ニャー」ペットのミミちゃんが鳴く。
「…………うう、私に優しくしてくれるのはミミちゃんだけだよー!!」
ミミちゃんのお腹に埋もれながら叫ぶと呆れたような目をされて手からくぐり抜けられてしまう。
そうだ。
悲しいことだって、ミミちゃんとなら乗り越えられる。私はひとりじゃない。
「待ってよミミちゃ〜ん」
四つん這いになりながらみっともなくミミちゃんを追いかけていると、手のひらにでこぼことした感触。「イタッ」
そっと手をどけて見てみるとなくしたとばかり思っていたお気に入りのピアス。
「こ、これ……!ずっと探してたのに!……もしかしてミミちゃんが見つけてくれたの!?」
私の言うことなど気にせずに我が家の姫はフイっと顔を向けて別の部屋へ向かってしまった。
__んふふ、と間抜けな声が出る。
やはりミミちゃんといると全て上手くいくのではなかろうか。
明日は良いことが起きるような予感がした。
『胸が高鳴る』
3/19/2024, 1:01:56 PM