はす

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巡り逢い

今年も春がやってきて、そしてまた終わっていく。春の蕾の芽吹きはとても儚くて、気づけば新緑の青葉が太陽の光を受け青々と照り映えていた。川沿いの、桜並木だった小道を歩いていく。春の終わりに足を止める人は少なくて、皆足早に私を追い抜いて行った。皆何かに追われた様に先を急いでいる。そんなに急いで、何があると言うのだろう。
木漏れ日がアスファルトに映り、影模様を残していた。背の高い葉桜の木を見上げると、鮮やかな若い芽の青が綺麗だった。
前に歩いていくと、一人、同じ様に佇んでは木々を見上げる人がいた。その人も私に気づいて、こちらを向いた。目線があって、会釈をして、お互いに笑い合った。
「綺麗ですね」
「はい。本当に」
春の終わりが運んできた、春の名残の巡り逢いだった。

4/25/2025, 9:24:50 AM