突然の君の訪問。
とても困るのでお引き取りください、と僕は君に風船をくくりつけることにした。
幽霊のように意外と軽いから、大きな赤い風船とともにふわふわと浮かんで去ってしまった。
徐々に小さくなっていくのを見送る。
「これでよし」
僕は現場猫のような指差呼称で確認する。
右よし、左よし、前よし、後ろ……
と後ろを振り向いたら、赤い風船が見えたものでちょっとびっくり。
いや、びっくりしなくてもよかった。
これは自分で用意していたものだった。
遠目から見たら、バラの花束のように見える。
リビングの窓が開けっ放しなので風が入り、赤い風船たちを揺らす。それだけなのに、空にとんでいってしまった彼女が、その中で蹲っているのではないかと思ってしまう。
一応、手を突っ込み、無いのを確認。
玄関に戻り、施錠。
……あれ? 靴が一足増えている……?
侵入を許したようだ。
8/29/2024, 9:57:19 AM