海月 時

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「ごめん。別れよ。」
ふった本人が泣くなよ。あーあ。何で涙が止んねーだろ。

「何で今日が、七夕なんだよ。」
世間が浮かれている中、俺の気分は沈んでいた。一部では恋の日と言われている七夕。そんな日に俺は、二年付き合っていた彼女に振られた。何でも、好きな人が出来たとか。俺は用済みだとか。
「本当に馬鹿だな~。」
一瞬でも彼女を疑った俺も、俺にあんな事言った彼女も、大馬鹿者だ。それでも良いさ。彼女が楽になれるなら。

「一年ぶりだな。元気してた?」
返事はない。何故なら、彼女はもうこの世に居ないから。突然発症した癌。そのせいで彼女は帰らぬ人に。俺が振られたあの日には、もう余生が決まっていたようだ。別に知っていた訳でも、分かっていた訳でもない。ただ彼女の涙は、真実だと思っただけだ。
「お前、昔から織姫と彦星の話好きだよな。」
彼女にとって俺は、生きる理由になれたかな。だからあの時、泣いてくれたのか。もう、答えは分からない。
「また来年、来るよ。」

七夕なんて嫌いだ。織姫も彦星も嫌いだ。
「幸せになんて、なんなよ。」
俺は夜空に輝く星に向かって、言い放った。

7/7/2024, 3:53:27 PM