王国の守りの要たる聖女は死んだ。秘密裏に処刑された。何もかも滅べばいいと世界を呪いながら。
彼女を殺したのは国だった。国民からの支持も富も権力も、全てを欲した国の王や重臣たちだった。
どんな命も分け隔てなく慈しむ聖女は、多くの支持を得、後ろ盾を持ち、富を集めた。彼女がそれを望まずとも。
聖女の命が潰えてまもなく、王国の各地には不審火が続いた。人気の無い森や、住宅街、貴族の別荘、牧場、ありとあらゆる場所で様々が燃えた。
不思議なことに、その火は何をしても消えない。そして気が付くと、世界は火の海と化した。王宮も、王さえも燃やして灰ばかりが残ると、火は全て消えた。
灰になった世界で、人ならざるものは呟く。
「生きるべきはあなた」
数え切れない命を犠牲に、世界に一筋の光が降る。刹那、灰の中に一人の女性が立った。彼女は何もない世界に驚き、辺りを見回す。そして、空に立つ姿を見つけて微笑んだ。
〉ハッピーエンド
3/29/2024, 10:55:32 AM