題 哀愁を誘う
「ねぇ見て」
リビングで家族でお茶を飲んでいる時、妹が私の肩をトントンと叩いた。
「ん?」
「ほら、ベランダ」
ベランダを見ると、うちの愛猫が外をじ~っと見ている後ろ姿だった。
「ずっとああしてるの、庭に落ち葉が舞ってるの見てるのかな?」
確かに庭には赤くなった木からはらはらと落ち葉が落ちている。
でも、我が家の愛猫ミントは顔をびくとも動かさない。
落ち葉を見るならもっと頭動かしていると思うんだよね。
じーっと一点集中して見ている。
「なんかさ、哀愁漂うよね」
プッと笑いながら妹が言った。
確かに。
後ろ姿で、群青の濃い青色の背景に落ち葉がはらはらする中後ろ姿で微動だにしないミントは何となく物悲しさを覚える。
本人(本猫?)は絶対にそんなセンチメンタルではないと思うけれど。
「本当だね、悲しみにくれた猫って題でSNSにあげよっか」
私が笑いながら言うと、妹も、それいいっ、と言いながら更に笑う。
そんな賑やかな私達の声がうるさかったのか、にゃーとミントが一鳴きして振り返る。
心なしか抗議の表情をしているような・・・。
「あ、トンボ見てたんだ」
ミントの振り返った後ろで、トンボが飛び立つのが見えた私はそう言葉を放つ。
家の縁側に止まってたトンボをじーっと見てたんだね。
あ、という顔でミントは振り返って飛び立っていくトンボを見送る。
なんだかその姿は本当に寂しそうな、何か物悲しそうな表情に見えた。
11/4/2024, 2:42:59 PM