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 お気に入りの坂道がある。
その坂の頂に立つと、右手に線路の土手があり、ゆったりと道路が曲線を描いて下っている。
土手は舗装されてなく、季節ごとの草が生える。

 昼間は、目の前にまるく広がる青い空と、草の色を楽しむ。夜は、道の脇の街頭がポツポツと灯るのがいい感じだ。特に月が見える日は、少し幻想的になる。月あかりに照らされて、土手の草や木がいつもより深い影を作る。
 
 ふわっと漂う草の香りと、虫の鳴き声も心地よい。思わず深く息を吸う。少し軽くなったように感じる足元の、かかとに力を込めながら坂を下る。
 この坂は、私のちょっとした癒しの場所だ。

「オアシス」

7/28/2025, 7:17:03 AM