27(ツナ)

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きっと忘れない

小さい頃は大人には見えない摩訶不思議なモノが見える。
きっと、無意識に周囲の様子を見ようと意識しているからだろう。
かくいう私も小さい頃は色々見えた質で。
特に覚えているのは"妖精"を見たことだ。
真冬の東北へ家族旅行。無数の雪が降りしきる中、露天風呂は最高だった。
露天風呂の岩にもたれ掛かり、雪を眺めていると、フラフラとこっちに近づく挙動不審な雪が見えた。
よーく目を凝らしてみると真っ白な髪に真っ白な肌、淡い薄水色のワンピースのような服に背中からは半透明で光沢を帯びた羽が生えていた。
じーっと見ているとあっちも気がついたのか、私に笑いかけた。
「うふふふふっ。」
「!?」
「…忘れないでね。」
「!…うん。忘れないよ。きっと忘れない。」
そう言葉を交わすと、妖精は白銀の世界へ消えてしまった。
私は急いで部屋に戻って暇つぶし用に持ってきたスケッチブックに妖精の姿を描いた。
私が描いた雪の妖精の絵は大人になった今でも手元にある。
あの出来事は夢や幻なんかではなく紛れもない現実だったんだ。

8/21/2025, 3:54:07 AM