エリィ

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 この国の首都から離れたところに住む俺は、つい先日、島に訪れた商人から、首都には国中で有名な女性たちの姿絵を売る店が期間限定で開かれていると聞いた。
 俺の大好きな有名女性も含まれているということで、いても立ってもいられず、有り金を握って旅に出ることにする。

 普段過ごしている、田舎から他のどこかへ行くのは約半年くらいだ。しかも首都となると数年ぶりだろう。

 まず、島の山から麓へ降りて、本土へ出る舟がつく港を目指す。船に乗り、本土に渡るまで約2日。そして、港からさらに乗り物のりばで、皆と共同で使う乗り物に乗り換え移動する。ここから目的地までの道があまりにも入り組んでいるのと、どこを見ても人、人、人。

 俺は目的地までの地図を片手に有名な喫茶店を目指すも、あまりの複雑な道のりと人並みに心が折れそうになっていた。それでも、目的地で見ることのできるものへの期待が、俺の体を動かしていた。

 沢山の人に道をたずねて、ようやく目当ての場所に近づいて来たことを知る。
 沢山の俺たちのようなお上りさんらしい男性たちが、ごった返しているからだ。そんななか、案内人により行列に並べられる。最後尾だったらしいが、すぐに俺の後ろに並び始めた。
 随分待ったような気がした。さて、そろそろ列がすすむかな? そう思った頃、俺より随分前、まだまだ先のところから叫び声や怒号が飛び交い始めた。

 すると数人の比較的体格の良い男性が数人、俺たちの方に順に歩いてきて、実を縮めながらこう言った。
 
「つい先程の団体ですべて品切れのため、販売を終了いたしました」

 まさか、有名女性の商品販売日が今日が最後で、しかもここまで来て、並んで待った挙げ句すべての商品が売り切れだと……!?
 俺は目の前で、閉じられていく会場の扉を見つめた。人間、あまりにもショックなことがあると表情がすべて抜け落ちるというけれど、今の俺がまさにそうだった。
 
 その後俺は、あの首都へ行く機会はなくなり、もうそこにしかない商品に会うことはなかった。
 あと、首都よりも、ここではないこの島のほうがずっといいと思い知った。


お題:ここではないどこか
   君と最後に会った日  

※かなり強引に2つのお題を詰め込んでみました…

6/27/2023, 10:57:53 AM