ある雨の日、何故か落ち着かなくなり家を飛び出した。丁度梅雨で、足が濡れた草にあたり湿り、少し気持ち悪い感触がして、そろそろ帰ろうかと振り返る。
すると日本人の様な、でも違う様な顔をした可愛らしい女の子が道の真ん中にぽつんとたっていた。
一見幼く見えるが自分と同じ年齢にもみえる。
とても不思議な女の子だ。さっきの推測からするに話を聞くような事をしなくてもいいかと思い、軽い会釈を交わし、帰路につこうとするとぐいっと手を掴まれて引き戻された。外見とは異なる怪力で、あっと声が出る。すれ違いざまにふわりと獣の様な香りがした気がした。
そんなことを思考する間もなく、遠心力でふり飛ばされる。
濡れた道に尻もちをつき、女の子に対し嫌悪感を抱く。真っ直ぐな目をした女の子に手を差し伸べられ、一度は拒否したがまるでその行動の意味が分かっていないような顔をした。
二度目に差し伸べられた手をとり、起き上がった。
それからというものよくその子に会うようになった。最寄りのバス停、曲がり角至るところで会った。つけられているような、自ら会いに行っているような感覚さえした。それと同じ頃夢にもその女の子が出て来るようになり、流石に何か言ってやろうという気になった。
次の日いつも出てくるところにつき何を言ってやろうかと考えを巡らせる。
出てきた!口を開けようとした瞬間、人差し指を口に置き、喋らないよう牽制してきた。
まるでこちらの考えを分かっているかのような真っ直ぐとしたその姿勢に余り関わってはいけないと思い知った。
隣を歩いていた人が倒れ、ホログラムの様に消えた。目の前の女の子は消えていた。
5/12/2023, 12:44:16 PM