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「乗ってく?」
「そんな、車じゃないんだから。『ちょっとドライブする?』みたいな軽いノリやめてよ」

友人は「ちぇー」と唇を尖らせると、不服そうにハンドルの上で頬杖をついた。タイムマシンのハンドルに。

「だっていつも言ってるじゃん。もう何年も叶わない片想いをして、時間を無駄にしたなーって」
「だからってタイムマシン開発しないでよ」
「前酔った時言ってたよね?『もしタイムマシンがあったら迷わず乗って、過去の私をぶん殴りに行くんだ』って」

確かに、言った。よく覚えてる。
私はもう何年も何年もずっと彼が好きで、ずっとずっと大好きで、でも彼は同じように別の誰かを想っていて。
先月、晴れて愛しい恋人との結婚式を挙げた彼の顔は、今まで見たことがないくらいに幸せでとろけていた。

「過去のあんたに言いなよ。その片想いは叶わない、時間を無駄にするだけだから今すぐやめなって」

友人の言葉に、私は笑って首を振る。

「それはぜひ言いたいね。でも、やっぱりやめとくよ」
「どうして?」
「たとえどれだけやめろって言われても、いくらぶん殴られても、そんなことされたところで、私の心から溢れる彼への"好き"は絶対に止められないから」

友人はため息を吐きながらも、でもどこかで嬉しそうな面持ちで、「ま、そんなことでやめられる程度の片想いなら何年もこじらせないわな」と茶化すと、あっけなくタイムマシンの電源を落とした。

1/22/2023, 12:54:15 PM