それはちょうど朝の日課を済ませた時だった。
“キュルル...ピィーッピィーッ!!”
と、不意にフクロウの鳴き声が部屋の中に飛び込んできたのである。
声の主へと目を向けると、幼馴染の相棒である小さなフクロウが何やらプレゼントを運んでやってきたところだった。
「やぁ、今日も元気いっぱいだね。いつもありがとう。」
プレゼントを受け取って頭をそっと撫でてやると
目を細めた小さな配達員は誇らしげにピィ!と鳴いて、主である彼女の元へとまた飛び立って行った。
...さて、中身は何だろうかとプレゼントを開く。
真っ先に目に飛び込んできたのは鮮やかなオレンジ色の花だった。
「!これは...」
僕はこれを知っている。なんせ自分も最近その種を買って、ひっそりと育てていたのだから。
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「どうして?今はまだ買えないって事?」
「僕達のスキルが足りない...のかな?」
「えぇ、魔法使い様の植物の育て方が今よりも更に上達されましたら販売致します。」
そう言って植物店のしもべ妖精に幼馴染と二人して門前払いされたのは少し前の出来事。
それからというもの、僕らは毎日色んな植物の育て方を研究し、沢山時間をかけて数え切れないほどの植物を実際に収穫してきた。
そうしてようやくこの間、僕はその花の種を買う事を認められたのである。
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箱の中からフラワーアレジメントをそっと取り出す。
一際大きいオレンジ色の“それ”はマグルの世界ではあまり見かけない色だったが魔法界では珍しく無いらしい。
まるで小さな太陽みたいだな、と思うと同時にふと元気いっぱいで明るい幼馴染の笑顔が思い浮かんだ。
『いつか、“あじさい”の花を送り合おうね。』
種が買えなかったあの日に交わした約束を覚えていてくれた事にじんわりと胸が暖かくなる。
もう少し近くで見ようと花瓶を持ち上げると間に挟んであったのであろうメッセージカードがひらりと落ちた。
“これからも夢と魔法の毎日を送れますように”
拾い上げたメッセージカードとフラワーアレジメントを見比べて自然と口角が上がるのを感じた。
なるほど、それならこの花瓶は一番よく見える場所に置こう。
そして返事は......もう決まってる。
少し浮き足立った気持ちを抑えるように僕はフラワーアレジメントを作るべく足早に植物店へと向かったのだった。
#あじさい HPMA side. S
6/14/2024, 8:58:37 AM