除夜の鐘が鳴り響く。
その様子を家のテレビで見ている私は、ふと元恋人のことを思い出していた。
相手とはかなり良好の関係だったが、私たちそれぞれが属している家系の仲がそれはまあ悪かった。
お互いに諦めず両親達を説得したが、より上の家系までもが突っ込んで来る事態となってしまったのだ。まあ過ぎたことのためその辺はどうでもいい。私はゆっくりと目を閉じて過去に思いを馳せる。
ふと目が合えば微笑んでくれる姿。
ボーン。
美味しいものを口いっぱいに頬張る姿。
ボーン。
映画でボロ泣きしている姿。
ボーン。
……別れる日の後ろ姿。
除夜の鐘というのは煩悩≒欲を捨てて新しい年を迎えよう、という行事である。
だが、私はこれをいつか忘れて、捨ててしまうのだろうか。
ボーン。
最後の鐘が鳴る。
8/5/2024, 3:35:44 PM