【太陽の下で】
芝生に寝転がり目を閉じる。吹き抜ける風の涼やかさ、照りつける陽光のもたらす熱、普段は気にも留めないそういった自然の心地よさが、視界を閉ざすだけで鋭敏に感じられた。
病で視力のほとんどを失った君は、それでも世界を美しいと言う。僕なんかよりもよほど的確に周囲の姿を捉え、キャンパスの上へと鮮やかに描き出す。君の世界を共有したくて、たまにこうして目を瞑ってみると、全く同じにはなれなくても少しだけ君の気持ちに近づけるような気がした。
近くにいるのが当たり前だった幼馴染。世間でその才能を高く評価され、どんどんと遠くへ行ってしまう親友。今ごろはパリの華やかな街並みを、白杖を片手に颯爽と歩いているのだろう。
太陽の下で思い浮かべる君の姿はあまりに輝いていて、誇らしさと寂しさが奇妙に入り混じった感覚がした。
11/26/2023, 12:13:06 AM