ミキミヤ

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「益子さん、一緒に帰らない?」

クラス委員の吉川さんと、その友達の伊藤さんが声をかけてくれた。いつも1人でいる私を気遣って声をかけてくれたんだろう。嬉しい。でも――

「結構です。1人で大丈夫なので」

私は、嬉しい気持ちとは裏腹に、拒絶の言葉を口にしていた。
吉川さんと伊藤さんは「そっか……」と言って2人で帰っていく。その背中を見送りながら、私はため息を吐いた。

2人に声をかけてもらって嬉しかった。ありがたかった。本当は、1人でいるのが寂しいと思い始めていたから。
でも、いつも2人で帰っているのに、私も一緒だったら、2人の楽しい時間に水を差しそうで怖かった。
私の言葉はいつも、私の本心をうまく紡いでくれない。
本当は「ありがとう」くらい言いたかったのに、臆病なところばかり出てしまって、ただ拒絶しただけになってしまった。
私の心の中と、口から外に出る言葉では、印象がまるで逆さまになってしまう。
一事が万事こんな感じだ。
素直になれない自分に嫌気が差す。

独りで学校を出て、トボトボと歩きながら、1人反省会を繰り返す日々。
あの2人には悪いことをした。謝りたい。そして、本当は嬉しかったのだと、ありがとうと、言いたい。
明日こそは、逆さまの言葉を紡がないように、勇気を出してみたいと、強く思った。

12/7/2024, 8:32:26 AM