—密会—
今日はあの人に会える。月が満ちた夜だけ、必ずあの人はあそこに現れる。
自分の部屋の窓から夜空に浮かぶ大きな月を見上げて、胸が高鳴るのを感じる。
夜の十時、両親が入眠したのを確認して玄関に向かう。音を立てないように静かにドアを閉めた。
彼女と出会ったのは偶然だった。
それは、半年前の満月の夜の話。僕は寝る前になって傘を公園に忘れた事に気がついた。次の日でもいいかと思ったが、お父さんから借りた物だったので、今日と同じように取りに行った。
すると公園のベンチに、彼女は一人で座っていた。
「一人で何してるの?」
僕が話しかけたのが始まりだった。
初めて会った時のことを思い返していると、公園に着いた。やっぱり今日もいる。
銀色の長髪は月の光を映し、透き通るような肌をした女の子で、まるで月のように儚く美しい。
「こんばんは」といつものように挨拶する。彼女も僕に気がついたのか「こんばんは」と返してくれる。僕は彼女の隣に座った。
「今日は何をお話してくれるの?」と彼女は聞いた。
「今日はね——」
満月の夜は、こうして彼女と話をしている。
満月の日以外でも会えたらいいなと思うけれど、そんな贅沢は僕には言えない。
お題:moonlight
10/6/2025, 9:50:40 AM