君の奏でる音楽
僕の耳にだけ聞こえるもう二度と聞けない君の声。
普段は恥ずかしそうに小さくしか開かないその口は、君が歌うときだけふわと大きく広がって甘く透明な柔らかい音を出す。
覚えてる。
ちゃんと覚えてるよ。
君が出す声は笑う声でも怒る声でも話す声でも歌う声でも全部覚えてる。
だから、ああ、どうか、泣かないで。
確かに他の音はわからなくなったけれど、君の声だけは解るんだ。
今君が何を言っているかも、君がどんな声で泣いているかも、覚えてるから。
君の声だけは聞こえるから。
ああでもやっぱり願いが叶うなら、
僕の愛する君のあの声が、甘く清らかで美しいあの音が、もう一度僕の鼓膜を震わせてくれますように。
8/12/2024, 11:05:01 AM