ショーケースには、1つだけケーキが残っていた。
夜遅く、仕事帰りのボクは、あまりにも疲れ切っていて、自分のアパートへの道のりを間違ってしまったらしい。
気づくと、まったく知らない場所にいた。
困ったなぁ…と、辺りをキョロキョロすると、洋菓子店の灯りがついているのが見えた。お腹もすいていたし、お店の人にここはどこか尋ねてみよう、と中に入ると、そこにいたのは、エプロン姿のクマさんだった。
「いらっしゃいませ。」
と、にっこり笑うクマさん。
ボクはあっけにとられつつも、ショーケースをのぞいた。
そこには、1つだけ、ケーキが残っていた。
すごく大きなケーキで、苺と生クリームがたっぷり飾ってあった。
「今日はもう遅い時間で、これだけなのですが、よろしければ半額でいかがですか?」
と、クマさんは言い、またにっこり笑った。
ボクは、半額でそのケーキを購入し、店を出た。店を出てから、ここの住所を尋ねるのを忘れたことに気づいたが、振りかえるともう店の電気は消え、閉店の札がドアにかかっていた。
仕方なく、重いケーキの箱をかかえながら、ふらふらと彷徨っていると、小さな公園に着いた。
ボクはベンチに座り、ケーキの箱を開けた。甘くてとてもいいにおいがした。
お腹がぐ~っと鳴り、もう我慢できずにボクは手づかみでケーキを食べ始めた。
美味しかった。
美味しくて、なんだか涙が出てきた。
あっという間にケーキを食べ終えると、中に1枚のカードが入っているのに気づいた。
そこには、
『ありがとうございました🐻』
と手書きの文字が。
なんだか胸がいっぱいになって、ボクは子どもみたいに、えーんえーん、と泣きじゃくった。
そして、そのままうずくまっていつの間にか眠ってしまった…
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
眩しい光で目が覚めると、ボクは自分の部屋にいた。仕事着のままだったが、ちゃんと布団に入っていた。
昨夜のことを思い巡らし、
″うーん、夢でもみたのかなあ?″
と、枕元をみると、
『また来てね🐻』
という、手書きのカードが置いてあった。
4/4/2026, 4:33:26 AM