夏川流美

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「どうして争わなければならないのですか!」


 宙に留まる我の見下す先に、喚くひとりの人間がおった。左手には人間と同じサイズの盾、右手には人間よりも長い槍を力強く握りしめ、果敢にも我と対峙しておる。



「つい先日まで、私たちはお友達だったじゃないですか! 私が、私だけが友達だと思っていたのですか!?」


「あぁ、そうであったな。我も貴様を友人だと思っておった。だがそれも、先日までの話。貴様は人間で、我は妖怪である。互いに敵になってしまったのだ。こんな世界で、我々ももう、仲良くはできまい」




 我は人間を威嚇する意味で、9本の尾で強風を巻き起こした。人間はたったそれだけで吹き飛びそうに足を崩し、よろめき、それからようやっと体勢を立て直す。



 なんと、愚かな。


 それほどまでに弱いのにも関わらず、我に立ち向かおうとする心意気。

 我の攻撃が一撃でも当たれば、息の根が止まることなど分かってるであろうに、話し合いから試みる心意気。



 それから、何よりも

「人間と妖怪が分かり合える筈はないんだ。妖怪を殲滅せよ!」と、勝手なことを言ってこんな小娘にまで強要する、立派な立派な人間共。


 全てがあまりにも愚かで、あまりにもちっぽけすぎる。我がここで小娘を見逃そうとも、小娘は人間に潰されるだろうな。



 であれば、我がやらなければいけないことはひとつ。

 小娘と真剣に対峙し、口には出せぬ思いを伝えてやるだけだ。


 どちらかの命が、燃え尽きるまで。



 



#命が燃え尽きるまで

9/14/2023, 12:03:09 PM