好きだった女の子に振られた。
ぼくの恋は、呆気なく散ったのだ。
「あーあ、残念。アタシも頑張って協力したのに」
そう言って幼馴染はずかずかとぼくの家に入ってくる。ここ最近、ぼくが片思いしていた相手と付き合えるよう色々画策してくれていたのだ。かといって、いざ振られてショックで立ち直れない日にわざわざ会いに来る必要なんてないのに。
その辺は、ちょっと意地悪というか、彼女らしかった。
「残念会だ残念会~っ」
「なんでそんな嬉しそうなんだよ」
「え、そうかな」
そうだよ。何なら最近で一番笑顔だよ。
そんなにぼくの不幸が嬉しいのか。
「でも、まぁあんたと色々作戦立てたりするの、楽しかったよ」
「玉砕しちゃったけどな。本当に助かったよ、ありがとう」
「……あのさ、女の子が善意で人の恋を手助けしたりすると思う?」
その瞬間、彼女の目が妖しく光った。気が付くとぼくはベッドに押し倒されていた。天井の光を遮るように、彼女はぼくの上へと乗っかって、片手がぼくの頬を優しく撫でる。
「女の子はね。同情すると見せかけて、人の獲物を横取りする狼なんだよ」
「ちょ……」
「相談に乗ってあげてたのも、あんたと一緒にいられるから。結局のところ、自分の利益優先で、計算高く行動してるってこと。覚えときなさい?」
男って単純だ。異性に好意を寄せられただけで、相手を凄く意識してしまう。
目の前の彼女は、既に幼馴染ではなくなった。
「今度はあんたを惚れさせる番よ」
耳元で囁く艶やかな声に、ぼくは既に夢中になっていた。
2/21/2023, 2:52:17 AM