【遠い足音】学び舎の廊下を並んで歩いた。俺達はあまりはしゃぐタイプではなかったから、ふたりの間にはいつも心地よい沈黙があって、足音だけが響いていた。その時間がとても愛おしかった。あれから10年。俺達は今、別の道を歩んでいる。もう2人分の足音が響くことはない。だけど、あの頃の遠い足音を今も、俺は覚えている。あの頃の愛おしい気持ちを、確かに思い出せる。それだけで、ひとりでだって歩いていけると、そう思えた。
10/3/2025, 9:20:35 AM