風に乗って
子供の頃は、よく紙飛行機や凧を上げたり
楽しく遊んでいたりした。
今では家の自室に引きこもって、
外に出るときも大体はコンビニに行くだけ。
そんな生活をして、ふと
テレビに写った紙飛行機の折り方と
テレビに反射した荒んだ顔。
この顔が自分だと認識するまで時間がかかった。
こんな顔してたんだ。
昔のことを思い出して、
「つくってみようかな」
机の資料の中から要らないものを引っ張り出した。
折っていく。
テレビから流れてくる作り方じゃなく
昔の自分が折ったような
「……できた」
不格好なそれはとても風には乗れそうもなかった。
テレビの中では嬉しそうに
できた!と言いながら周りの子たちと飛ばそうとする。
「…………」
窓を開けた。
今日は風が強かった。
風が止んだところで持っていた紙飛行機を
空気に乗せるように
優しく飛ばした。
意外と長く滑空している。
シャボン玉は上へ上へと上って
挙げ句には弾けて消えてしまう。
紙飛行機は前へ前へ、そして下へ下へと下がっていく。
だけど消えることはない。
弾けることがない。
風が吹く度に舞っていく。
羨ましい。
せめておまえだけは
いつまでも風に乗って
遠く遠く海の向こうまで。
4/30/2023, 2:48:17 AM