海月 時

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『また会いに来な。』
彼女は笑顔で言った。私の目には涙が浮かんだ。

「来週、花火大会があるんだって。」
今は夏休み期間。私は昔住んでいたこの町を訪れていた。
『昔はよく二人で行ったよね。』
私の横で話す彼女は、幼馴染で親友。私の引っ越しをきっかけに疎遠になってしまい、ついさっき再会したのだ。
『また一緒に行く?』
「行こ!浴衣あるかな?」
他愛のない会話。そんな会話でも懐かしさを感じるのは、夏のせいかな?

「楽しかったね。花火綺麗だった!」
彼女からの返事はない。私達の間には沈黙が流れた。それでも気まずさはなく、心地よかった。
『暫くは君とは会えなくなるのか。寂しいね。』
「今度は君が私に会いに来てよ。」
彼女は首を横に振った。私が聞く前に、彼女は言った。
『目を覚ませ。君の居場所はここじゃないだろ。』
この言葉を聞いた途端、頭に鋭い頭痛が走る。そして、私の意識が遠のいてくるのが分かった。
『また会いに来な。私はここで待っているよ。』
笑顔の彼女は、なんだか泣いているように見えた。

目を開けると、白い天井があった。段々と記憶が戻る。
「そっか私、事故に遭ったんだ。」
夏休み初日、私は駅に行こうとしていた。横断歩道を歩いた時、車が横から来て。
「何しに、駅に行こうとしたんだっけ?」
そうだ。私は町に帰ろうとしたんだ。彼女の墓参りのために。じゃあ今までのは、全部夢だったのか?夢だとしても、彼女と過ごした記憶は本物だ。
「君は夏の精になってまで、会いに来てくれたんだね。」
目から一筋の涙が流れる。また会いに行く。そう誓いながら、私は夏の音に耳を澄ました。

6/28/2024, 2:57:36 PM