「もう、あさってはありません。明日で世界が終わります」
気象庁が笑える冗談にもならない予言をした。
そして、テレビの中の彼は続ける。
「なぜなら、地球温暖化がピークに達して地球が爆発するからです。
地球が爆発すれば私たちの『人生』はあっけなく宇宙のチリとなって一粒一粒の星になるでしょう」
「拓也、私たち宇宙のチリとなっても一緒にいられるかな?」
佳澄が言ったため息のようなその願い事に対して俺は
「チリになっても記憶は残るよ」
「そうだよね!それだけ私たち愛し合ってるもんね!」
「うん」と俺は言葉にならない返事をした。
佳澄は「明日、どこかにいこーよ!」
と言って俺の腕を引っ張る。
「なんで?」俺は面倒くさそうに言う。
「だって、明日で世界が終わるんだよ?
だったら、いろんなことを目に焼き付けたい」
俺は佳澄の言う『明日で世界が終わる』という、
気象庁の予言を間に受けるところが嫌いだった。
当たり前に来る明日と当たり前に来ないあさっては
どう違うのかわからない。
自分が死ぬならともかく、地球が爆発するなんて想像できない。
もし、本当に地球が爆発して世界が終わるなら、
俺は佳澄と月に行きたかった。
月に住んでいるうさぎになりたかった。
「ねぇ!拓也!」
「そんなに言うなら、俺と宇宙へ行こう」
「えっ?先に宇宙のチリになるの?」
「違う。月で一緒に見知らぬうさぎになろう」
佳澄は目を丸くした後、
「荷物っているのかな」と真顔で言った。
9/19/2025, 6:31:05 AM