『ロマンのない天気』
傘の内側で聞く音は、普段よりよく聞こえるらしい。
雨に濡れないこの狭い範囲だけと考えるとなんてロマンチックなことだろうか!
ただ残念なのが、今日は豪雨で傘の意味が無いことだ。朝の天気予報では『ぱらぱらと〜』なんて可愛らしい表現で伝えられていたはずなのだが、お昼頃から雲行きが怪しくなって、夜の今になって土砂降りになってしまった。
靴下はぐしょぐしょだし、パンツの裾は雨に濡れて黒くなっている。
カッパを着ている人を恨めしく目で追ってしまうほどだ。
「ロマンチックになりたかったー!」
傘を畳んで雨で司会の悪い中を走る。
前髪から伝う雫にロマンチックは存在しなかった。
4/21/2024, 11:43:43 AM