裏表のないカメレオン

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 白銀の絨毯の上で列をなした色とりどりのスノーボードには、すべて番号が振られていた。
「ナナジュウイチ、ナナジュウイチ……」
 何年も巻数を重ね続けた漫画から一冊を選びとるみたいにして、自分の板を見つけ出す。同じようにそのへんにいるレンタル組の猿真似でしかないが。
「はやくいこうぜ」
 長屋にうながされ、慌てて板をとる。ずしりと木の重みが手にのしかかる。
 雪に苦戦していたさっきまでとはちがい、人が変わったように長屋は慣れた手つきでそれを担ぐ。
 そして気が遠くなりそうなほど小さいリフトのほうへ、振り向きもせずそそくさと歩いていった。

1/8/2024, 12:58:37 PM