ひみ

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俺の彼女は、どうやら他の男がいたらしい。
彼女は、俺に対して向かい合わせで座っており、隣の男に縋り付いている。
何かおかしいとは思っていたのだ。



数年前から付き合っていた彼女は、ここ最近俺の家に泊まりにくることが少なくなっていた。

仕事に追われ、趣味を楽しみながら、彼女に喜んで欲しくて、彼女の好きなものを作ったり買ったり。

なかなかに楽しんでいたと思う。

あの日、彼女から「別れよう」と言ってきた時から、全て変わってしまったんだろう。

その後、彼女の夫を名乗る男が弁護士と共にやってきた。

彼女はそもそも既婚者で、今回のような件はこれまで両手に余るほどあったのだとか。

「そろそろ本気でウチを追い出さなければ。」
「そうですね、お子様への接近禁止命令すら守っていないご様子なので、裁判を起こすまでもなく落とせます。ですが、今回の件で被害にあった(俺の名前)さんなどには賠償金を払ってもらうということになっています。つきましては、裁判での証言にご協力いただきたく〜」

金なんかで解決できると思っているのか。

そう思ったが、この人たちに言っても反論されて彼女に対するこの怒りをぶつけられないように思ったので、やめにした。

そして今、俺は証言台に立っている。



この数日後、裁判が行われた。証拠集めは殆ど終わっていたようで、粛々と進んでいく。

彼女が何かぶつぶつと言っているが、よく聞こえない。

ふとこちらを見たかと思えば、救世主見つけたりと目を輝かせ、こちらに向かって叫んできた。

ああ、ここで終わりなんだ。

そう思った。

8/26/2023, 3:24:11 AM