冬野さざんか

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 朝は嫌いだ。寝汚い私はいつも、携帯電話のアラームに叩き起こされるのだけど、そういう時はあと五分がお決まり。朝なんて来なきゃいいのに、それならずっと寝てられるのに、そんなおはようが恒例なのだ。今日だってそう。アラームに手を叩きつけるようにしてその音を止める。携帯電話に恨みはないし、それどころか常日頃お世話になっているわけだが、この瞬間だけは親の仇だ。許せ。アラームの音が止まってからも、少しだけぼうっと壁を眺める。そして少ししてから、のっそりと起き上がる。
 嘘、アラーム設定時間からもう五分も経ってる。
 毎朝こんな感じ。近頃は梅雨の気配がして、部屋の空気は少し重い。体を引き摺るようにして窓辺に立つと、一思いにカーテンを開いた。シャッ、と、遮光カーテンもレースのカーテンもいっぺんに。
 途端、目を焼くのは朝の日差し。頬にぶつかる光。
 うっ、と、目を細めて一秒間。そろそろと開くと、全く憎たらしいほどに青空。
 恨みがましい私に口笛でも吹きそうなほど晴れ渡る空は、私の頬に朝日を投げて、私の鼻先はぽかぽかだ。
 私の一日はそうやって、どうにかこうにか始まる。

「朝日の温もり」

6/9/2024, 2:03:14 PM