美冬

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夢が醒める前に

「夢が醒める前に、死んでいたらいいのに」
友達の口から、うっかり、とでも言うように転がり出た欠片。
そーだよねー、わかるわかるー。
と、食べ物の好き嫌いの話をするように流しながら、私は脳内の景色をフル回転させる。
あの日の彼女も、違う日の彼女も、いつも愛らしく笑っていた彼女のえくぼ。
なにか心当たりはなかっただろうか。このトゲトゲの欠片を丸く磨いて彼女の口に押し返すヒントは。

別に彼女が明日死んでも、悲しむけど、生きていける。だから、私はこの場を穏便に流したいという利己心だけで彼女の明日を望んでいる。

だって、このパスを拾えなかったから、彼女が消えたとか考える人生、嫌なんだ。
私はずるい。どうしようもなく自己中心的だ。
必死で彼女とすごした日々のフィルムを凝視する。

言葉の前に、雫が落ちた。
「貴女のそういう繊細なとこ、とても好きよ」
完璧な角度を描くその唇に、暴力的衝動をぶつけたくなる。でも雫が邪魔で何も出来ない。

私は卑怯で自己中心的な人間です。だから私のためにそばにいてください。

どうせ彼女には届きゃしない独白を抱きしめて、雨やみを待った。

3/20/2024, 6:52:07 PM